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2011年12月23日金曜日

2011年 今年もありがとうございました

こんにちは、シツチョーです。

さて、激動の2011年も今日は12月31日の大晦日です。
私個人の感想としては、4月に千葉工業大学に移り右往左往しながらあっという間に時が過ぎてしまった、といったところです。

正直、UXの研究そのものはあまり進みませんでしたが、学会発表は企画セッションも含め4月以降で、5件発表しました。また、年内の投稿はできませんでしたが、執筆中の投稿論文2本も、年明け早々に投稿できそうですし、収穫の年ではありました。

特に、企業や団体等での講演やワークショップは、本当にたくさんお声掛けいただきました。ネタとしては、UXについてが一番多く、次いでエスノグラフィック・アプローチ、ユーザビリティ/HCDという感じでしょうか。

2010年~2011年の、学会発表以外の講演・ワークショップの記録をまとめました。2011年だけを見ると、平均月に1回はどこかで講演やワークショップをさせていただいたことになります。
これ以外にも、企業との共同研究もいくつかあり、本当にお世話になりました。こちらは年度末までに成果を出さないといけませんので、引き続き努力したいと思います。

それから忘れてはいけない成果として、産業技術大学院大学での履修証明プログラム「人間中心デザイン」を今年も開講できたことがあげられます。講師としてお願いしておりますHCD関係の皆様方のお力添えと、産技大の学長、研究科長をはじめ先生方、また事務のみなさまのご理解とご協力があってなんとか今年も実現にこぎ着けました。この分野では国内唯一のプログラムですので、来年もなんとか開講に結びつけたいと考えております。

とにもかくにも、こうしてたくさんの活動をやらせていただけますのも、ひとえに皆様のお力添えのおかげです。本当にありがとうございました。

最後になりましたが、なんといっても13名の仮配属の学生を迎え、安藤研究室がキックオフできたことは本当にうれしいトピックでした。本番はこれからですが。。。安藤研のみんなもがんばって参りましょう。

お世話になった皆様、本年も本当にありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。

皆様にとって、よい新年を迎えられるよう、心よりお祈り申し上げます。

2011年12月31日 


安藤昌也

2011年12月18日日曜日

ゼミワークショップ-構造化シナリオ法

こんにちはシツチョーです。

12月15日(木)のゼミでは、ゼミワークショップを行いました。これまで「クリーンにする(部屋をきれいにする」というテーマで、フォトエッセイ→インタビュー→KA法でユーザーの価値とコンテキストを理解してきました(ブログ参照)。このデータを活用して、新しい体験を産み出すアイディアを考えるのが、今回のワークショップの目的です。

構造化シナリオ法

ワークショップでは、日本人間工学会アーゴデザイン部会が開発してきた、構造化シナリオ法を用います。構造化シナリオ法は、ユーザーの本質的要求価値(今回はKA法で導出したユーザーの価値)とペルソナ情報、ビジネス情報(今回のWSでは省略)を元に、シナリオを抽象度のレベルを変えながら、徐々に具体的にブレークダウンしていく体系的なシナリオライティングによるデザイン手法です。UXのためのデザイン手法の代表的で有効な方法といってもいいでしょう。私がカリキュラムを担当している産業技術大学院大学の人間中心デザインの専門プログラムでも、この手法を採用し、横浜デジタルアーツ専門学校の浅野先生に講師をやっていただいております。

さて、少しこの手法について解説しましょう。ポイントは、3つのレベルでシナリオを記述することです。3つとは、1)バリューシナリオ、2)アクティビティシナリオ、3)インタラクションシナリオです。バリューシナリオがこの3つの中でもっとも抽象度が高く、これから発想し、考えるプロダクトやサービスが提供するユーザーにとっての価値が、そのプロダクトやサービスを使うシーンとともに記述されたものです。ここには、具体的な製品の姿や操作などユーザーが行う行動は記述されません。あくまで、これから作る製品をユーザーがどのように捉え、製品がどういう価値を提供するのかのみに着眼したシナリオになります。まずUXをデザインするには、ここが意識されないと意味がありません。

次に書くのは、アクティビリティシナリオです。ユーザーが製品を使うそれぞれのシーンにおいて、どんな使い方をするのかをユーザーの活動に着目して記述したものです。実は、これが最も重要で、かつ結構練習を積まないとなかなか書けないシナリオです。ここでは、ユーザーと製品の関わりを中心に記述するのですが、具体的なインタラクション(操作やメディア、デバイス)は登場しません。同時に、先に記述したバリューシナリオを満たしている必要があります。

アクティビティシナリオは、シーン毎に製品を使うタスクがシナリオの中に出てきます。そのタスクを詳細にブレークダウンしたのが、インタラクションシナリオです。インタラクションシナリオは、具体的な機器やメディアなどとユーザーの操作を記述します。ここまで落ちてくると、簡単なワイヤーフレームは書けるレベルになっているはずです。

先述の浅野先生によると、多くのエンジニアの方はアクティビティシナリオを考えるのが不得意で、先にインタラクション(ワイヤーフレーム)を書いてから、その後付けとしてアクティビティシナリオを考えてしまう人が多いようです。実際に私もこの手法を実践してみると、アクティビティシナリオを考えるために、ある程度具体性のある製品イメージを思い浮かべないと書けないという経験をしました。構造化シナリオ法は、3つのシナリオを行ったり来たりしながら、徐々に具体化したり修正したりして作るものです。ですので、インタラクションシナリオを先に作ってはいけないわけではありません。でも、UXDでは、ユーザーの体験を基軸にデザインを考えるわけですので、いかに理想的なアクティビリティシナリオをしっかり書き、そのアクティビリティシナリオをドライビングフォースに詳細をデザインしていくことが重要なはずです。その意味では、UXを志す方には、アクティビリティシナリオをまず発想してしまう、というくらいになっていただきたいものです。

ワークショップ

さて、安藤研では2時間で構造化シナリオ法のワークショップを、2チームに分かれてやってもらいました。まず、時間短縮のためペルソナは安藤研学生と似た境遇の人にし、以下のようなペルソナにしました。

ペルソナ

山田太郎 21歳・男性 大学生 一人暮らし
・デザイン学科に通っており、自宅で演習課題をやったりするので部屋が汚れがち。
・部屋を掃除をするのが好きではないが、作業をするのに部屋が散らかっているとイライラする。
・部屋にあるものには、ある程度こだわりがあるものをそろえるようにしている。

進め方

まず、チームでKA法の価値のシートから、ペルソナを考慮してどんな価値を提供がよさそうかを考え、提供価値を決めます。次に、そうした価値を提供できそうな製品のアイディアを考え、バリューシナリオを作成します。

バリューシナリオが出来たら、一端グループで発表。その後、1つの代表的なシーンを選び、アクティビティシナリオを考えます。その際、インタラクションを想像する必要があれば、インタラクションを考えることも可としました。

最後に、アクティビティシナリオを表現するためのアクティングアウトを行います。

結果

チーム1:別府、宮川、一丸、雅俊、神山




●バリューシナリオ
バリューシナリオは、あんまりうまく書かれていませんが、「友達が来た時にパッと見きれいに見えるように、こだわって整理され、友達に褒められてうれしい」ということですね。パット見きれいだけど、こだわって整理されるという点を、どういう風にブレイクダウンするかがポイントですね。

しかし、前も言いましたが、ストーリーテリング能力を鍛えましょう。。。

●アクティビリティシナリオ
シーンは、バリューシナリオの3、「友達が来た」というシーンですね。製品がどんなもんか分かりませんが、すでに商品名がついてますねw。なんか入れて振るんですね。シェイク。

●アクティングアウト



おお! ラピットプロトタイプというか、イメージ映像を使って表現してありますね。技術的な制約は考えないという条件なので、どうやるかは別ですが、面白そうな体験の提案ではありますね。ちゃんとバリューシナリオの価値は提供できているみたいですね。

以下は、アクティングアウト中につかった、製品イメージの映像。


iPhoneがあると、こんなプロトタイプも瞬間でできてしまうわけですね。ささっとこういうのを作れる安藤研学生は、立派。もちろん、逆再生ビデオ。iPhoneをつかったプロダクトイメージのプロトタイプの可能性が広がるかも。。。


チーム2:登尾、岡野、高岡、菅谷




●バリューシナリオ
「掃除のタイミングがわかって、掃除をした後に褒めてもらえるので、段々掃除が好きになった」というバリューシナリオ。なるどほね。ポイントは「掃除のタイミングがわかる」ことなんだけど、掃除のタイミングがわかるってどういうことだろう? それってKA法の価値のどれだろう?

●アクティビリティシナリオ
なんと! 製品が掃除のタイミングを教えてくれると同時に、友達を呼んでしまう(笑)! 友達が来ちゃうから掃除しなきゃーって(笑)。一種の脅しですね。でも、友達が来るかどうかは友達次第だし、どうなのかな? でも、発想は面白い。

●アクティングアウト




うーん。アクティングアウトでみると、あんまりピンとこないなーと言う感じがします。アクティングアウトはやってみて、オーディエンスに計画したバリューシナリオの価値が伝わるか伝わらないかが評価の一つの指標です。受けが悪い場合は、どこかがまずいのでリファインしましょう。

このアイディアの場合、「掃除のタイミングを教えてくれる」というのが、KA法の分析では当てはまるものがないというのが問題でしょうね。もしかしたら価値の解釈を間違ってしまったのかもしれませんね。

まとめ

2チームとも、まずは構造化シナリオ法で考えることは出来たと思います。特にチーム1は、ラピッドに効果を表現するビデオを作成してアクティングアウトで見せるなど、すばらしかったです。よく考えたらこのチームは、情報デザイン演習でアクティングアウトを経験したことがある学生が、3人もいたからですね。なるほど納得。

一方、チーム2はそもそもユーザーの本質的要求価値をうまく設定できなかったため、ハイコンテキストな解決策になってしまったのが分かりにくさの原因でしょうね。ただ、「友達を同時に呼んでしまう」という発想は、学生ならではで面白いくてよかったです。

安藤研のほとんどはプロダクトデザインコースの学生です。このワークショップが終わった後の振り返りの時、ある学生が「プロダクトだと、作品ができた後に先生から“これ誰がいつ使うの?”って言われたりするけど、最初から考える方法を知らなかった」とのこと。そうだよねー。プロダクトは、こういう体験から発想することを教えませんからね。

UXDのデザインアプローチの一つ、構造化シナリオ法でした。

2011年12月15日木曜日

日本人間工学会関東支部大会で発表

こんにちは、シツチョーです。

2011年12月11日に、芝浦工業大学で開催された第41回日本人間工学会関東支部大会に参加し、アーゴデザイン部会の企画セッションで発表してきました。



この企画セッションは、同日開催の関西支部大会の同名の企画セッションとインターネット同時中継で開催しました。使用したシステムは、富士通さんの特別なご支援で実現しました。アーゴデザイン部会のみなさんが、何日の前から接続テストをし、前日も会場入りして何度もテストされ、当日も1時間前から様々な問題が発生しながらも解決策を講じながら準備をして本番を迎えました。本番はトラブルもなく中継セッションができました。こういう新しい形の研究会の可能性を感じました。ご準備いただいた皆様に感謝いたします。

さて内容ですが、これまで人間中心設計を追求してきたアーゴデザイン部会の、新たなテーマについて4つのキーワードから議論を深めることです。

4つのキーワードとは、「人間の成長」「参加型デザイン」「技術の革新」「環境の変化」です。私は「人間の成長」について、専門のユーザエクスペリエンスとの関係から議論しました。




私はモノの意味という観点で考えているので、どうしても抽象的な議論になってしまいます。ただ、他の3つのキーワードをお話しいただいた先生方との話が、いろんな接点があることがわかり、次第に新しいアーゴデザインの方向性が見えてきた感じがします。

ちなみに、私の思考のパターンとして“間をつなぐ”とか“シフトする”という、事象を動態として考えることが多いです。このプレゼンでいうと、四象限にわけた間をつなぐ矢印です。わけること(セグメント)は、調査などに基づいてできるのですが、それを移動させるフォース(力)を考えるともっといろんなことが発見できるし、応用できると感じています。

このプレゼンの内容も、まだまだ思いつきなので、今後さらに部会の皆さんと議論を深めていきたいと思っています。

2011年12月14日水曜日

複合機のUXに関する合宿討議 (加筆)

こんにちは、シツチョーです。
(最初に公開した内容について、ちょっと誤解が多いようなので、一部を加筆・修正しました)

報告が遅くなりましたが、2011年11月10日(木)~11日(金)と、(社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)ヒューマンセンタードデザイン小委員会の皆様と合宿討議@伊豆に参加させていただきました。

先日、ブログでも紹介させていただきましたがJBMIAの皆様とは、事務機におけるUXおよび長期的ユーザビリティの評価法について、ご一緒に議論させていただくことにさせていただいております。

当日はあいにくの天気でしたが、遠くに初島が見えるなかなか風情のところでした。

参加されたみなさんは、主に事務機器(コピー機やプリンタ、および複合機など)のメーカーで人間中心設計やデザイン、品質保証等に関わっておられる方です。

最初に前回の講演で僕の方から提示させていただいた「利用経験に基づくメンタルモデルの精緻化仮説」について、事務機においてそのようなプロセスはあり得るのか? 効率化を旨とする事務機において、利用のモチベーションや楽しみという視点は存在するのか? といった論点から議論をスタートしました。議論の詳細は公開できませんが、とてもいい議論をさせていただき、私の研究の大きなヒントをいただいた気がいたします。



ちなみに、「利用経験に基づくメンタルモデルの精緻化仮説」というのは、ユーザーの主観的体験であるUXとデザインとを結びつけるために、仮説的に示したモデルです。つまり、ユーザーのUXは、それによって「生活におけるモノの意味(=広い意味でのメンタルモデル)」が、徐々調整されていく過程である、という視点からみた一つの仮説モデルで、僕の過去の研究を整理する作業の途中成果です。

精緻化という言葉が、なにか正しい方向への誘導をイメージしがちですが、あくまで個人の生活のなかで、「ああ、この製品って、自分にとってこういう風に役立つんだな」とか「こうやって使っていこう」といった、意味の確立という程度のつもりで使っています。僕自身、これはまだいいまとめではないので、今後も議論で変化していきます。

さて、議論を活発にするために、事前に安藤研のUX研究部の学生に協力してもらって、コピー機の利用における、意欲の向上を、すごく簡単な実験で試してみました。


まず、コンビニや生協などでコピー機の利用経験がある学生に協力者になってもらい、X社の複合機(よく会社にあるタイプで、比較的低価格な?ランクの機能の製品)を操作するテストを実施しました。

タスクは、「4枚(A4片面刷り)の原稿を、両面印刷で5部、ホチキスを止めればすぐ資料として出せるように印刷する」というものです。要するに、両面でソートする、というものです。コピー機のユーザビリティテストではよくあるタスク。さて、どうでしょう?

うーん。口に指をあてて、考え込んでいます。。。彼は決して使ったことがないわけではないのですが。。。


いろいろやってもうまくいきません。まずもって、自動原稿送り装置(ADF)がついているのですが、その存在を知らないようです。コンビニのコピー機は、故障などを避けるためか、ほとんどの場合ADFが付いていません。だからだと思います。

ただ、彼の場合、「片面→両面」という設定そのものがわかっていないようです。


この初期画面でいうと、中央右よりに「両面/片面」の選択があります。彼は、「両面→両面」を選択しています。彼的には、「両面印刷をしなくちゃ」と思っているわけですから、どうしても「両面」という文字に誘目されてしまうわけです。こういう現象は初心者によく見られる現象です。ただ、このUIは、知っている人でもわかりにくいかもしれません。。。

結局、タスクはできませんでした。

そこで、一度、僕自身が同じタスクを実施して、成功する様子を操作画面が見えるか見えないか位の距離から観察させます。これをモデリング学習と言います。みなさんも、どこかの段階でADFというものの存在を知り、その使い方を覚えたはずです。先輩に教えてもらった人もいるでしょう。誰かが使っている様子を観察し、それで使い方を知ることは結構あることです。特に、コピー機は社会性の中にある機器、と言う特徴があります。ですから、その状況を想定し、モデリングをさせます。

すると。。。彼曰く「えー、そんな簡単なんすかー!」と驚ろいた様子。その後、再度タスクをやっていただきます。しかしながら、どうしてもうまくいきません。

彼の発話を聞いていると、どうも「原稿を読み込ませ」その上で「印刷にゴーサインを出す」というメンタルモデルのようにおもわれます。確かにコピー機の設定によっては、まず読み込ませることを先に処理し、その後読み込ませる原稿がないことを示すボタンを押下させてから、印刷の「スタート」ボタンを押すというモードになることもあります。しかし、現在のタスク(彼がモデリングした私の操作)はその必要はなく、処理の設定を先にさせてしまえば、読み込み=印刷でOKです。ただ、むしろ彼の発想の方が機械側の手順とはマッチしているのかもしれません。

モデリングをしても、結局タスクはできませんでした。

今回のラフな実験の目的は、コピー機を使うということだけでも、意欲が関わっているという、先に挙げた「メンタルモデル精緻化仮説」を確かめたいわけです。

現在の状況を確認しましょう。1回目の利用エピソードは、タスク完了できずガッカリし、かなりやになっているはずです。インタビューでは“このコピー使えねー”と思ったと言っています。意欲は低下したわけです。2回目の利用エピソードは、モデリングという経験であり本人の利用体験ではありません。でも、彼はそれを見て“なんと簡単だ、自分にも出来るかもしれない”と思ったと言っています。ADFの存在を理解し、そんな便利な装置だという風にメンタルモデルが修正されたはずです。それで使う意欲=自己効力感が高まった。

3回目の利用エピソードは、意欲高まった状態で、今一度タスク操作をやったわけです。ADFを使って。しかし、思ったように出来ない。“どうすりゃいいの”という苛立ちと共に、再び意欲が低下してしまったわけです。

自己効力感を提唱したバンデューラは、自己効力感を高める4つの方法をあげています。
    1.達成体験
    2.モデリング
    3.言葉による説得
    4.情動的喚起
(上記用語はバンデューラによる表現とはやや違います)

先にも示したように、モデリングは意欲を高めることがわかります。

ここでちょっと追加的な実験をしました。
利用意欲を高めるためには、上手に教えてあげればいいんじゃないかと。たとえばタスクの全部を教えるのではなく、ちょっとしたことがわかる体験を増やしたらどうかと。

バンデューラは、ゴールの分割によって多くの達成体験を増やすことで、自己効力を高められると言っています。通常ヘルプは、何かの方法を教えます。その考え方ではなく、わかる体験を増やすという方法をとってみたらどうかと。

そこで、次のような追加的な実験をしました。わかる体験としてボタンに対する音声ガイダンスを用意します。といっても急に実装できませんから、各ボタンについての説明文を用意、それを私が“機械みたいなしゃべり方で”読み上げることにしました。

問題は説明を出すタイミングです。そこで、各種設定を押した際にそのボタンの意味を読み上げることとしました。たとえば「両面→両面」ボタンを押下した場合は、「両面印刷の原稿を両面印刷でコピーする設定です」のようにヘルプをしゃべります。

実際にタスク操作をやってもらいました。やはり先ほどと同様に「両面→両面」ボタンを押したりします。が、同時にヘルプ音声が読み上げられるので「そうじゃないなぁ。。。」などとつぶやきながら、機能の探索を始める様子が観察されました。間もなく「あ、わかった! 片面→両面かー」とようやく理解。
ご覧ください、この喜びよう(笑)。このガッツポーズはやらせではありません(笑)

もちろんこれは、私が人間で隣で読み上げていますから、本当に読み上げ機能があったらよくなるということを言いたいわけではありません。ヘルプではなく、意欲が高まる手がかりをどう提供すればよいか、という視点で考えてみたらどうなるかという試みの例です。

たとえば、iPhone用のGoogleのアプリのヘルプはおもしろい作りになっています。
画面がシンプルなので出来ていることですが、実施のGUIにオーバーレイすることで、必要な情報を伝えています。ヘルプといえばヘルプですが、タスクのヘルプではありません。

こういう感じをイメージした音声ヘルプだったんですね。

佐伯胖は、かなり昔の本ですが『「学び」の構造』の中で、“覚える”と“わかる”の決定的な違いについて述べています。わかるための情報の出し方は、まだまだあるんじゃないかと思うわけです。これをヘルプといえばヘルプなのですが、個人的にはヘルプじゃない(w)。

追加的な実験の部分は、かなり適当感がありますが、今後模索したいところです。

(加筆・修正前にはこの後、わかってるね感についての記述がありましたが、改めて書きます)

2011年12月13日火曜日

企業でのエスノグラフィック・デザインワークショップ


こんにちは、シツチョーです。

安藤研では企業の方とのワークショップをご要望があれば行っています。学生も一緒に参加させていただくことで、社会勉強の機会とさせていただいております。

2011年12月1日に、富士フイルムデザインセンター様において、「エスノグラフィック・デザインアプローチ(分析編)」のワークショップをやらせていただきました。このワークショップは、エスノグラフィックなリサーチの結果として得られた写真や発話データを用いて、ユーザーの生活における価値モデルを構築する分析法を体験するものです。安藤研が開発を続けているKA法のワークショップです。

今回は分析方法に着眼した2時間のワークショップのため、データは各自テーマに沿って撮影した2枚の写真だけということで行いました。すごく簡易なフォトエッセイですね。

テーマは、「健康を気遣う」です。富士フイルムは、事業ドメインをどんどん変化させ常に新しい事業領域にチャレンジし続けている企業です。もともと医療機器分野のシェアも大きいのですが、最近ではCMでもおなじみの化粧品やサプリメントなどの事業も大きく育ってきています(富士フイルム社のサイト参照)。ですので、人々の“健康を気遣う”行為は何より重要だと考えたためです。

ワークショップはデザインセンターのデザイナーの方約30名と、安藤研+山崎研の学生6名で行いました。安藤研からは宮川くん、一丸くん、別府くんが、山崎研からは山下くん、木村くん、酒井くんが参加してくれました。


はじめに、エスノグラフィック・デザインアプローチの説明をした後、KA法の分析練習を行い、その後1時間かけて皆さんが撮影してきた写真を分析してもらいました。なお、分析は自分の写真を分析するのではなく、他の方の写真を分析してもらいました。

 

さすがデザイナーのみなさん。飲み込みが早く、2時間のワークショップなのに、各チーム簡単なマップまで完成させることが出来ました。



ちなみにこちらは、学生チーム。何せ枚数が少ないので、ごく限定的な結果ですが学生らしい結果になったと思います。

やはり写真があると、ユーザーのコンテキストがよくわかりますね。

現在、このワークショップで得られた分析結果をすべて集約し、それを全体の価値マップにする作業を安藤研で進めています。


結構枚数があるので、大きなマップになってます。分析の過程で面白かった点をいくつか。

大きな分類として“わかっちゃいるけど、やめられない”という系統のグループがあがりました。「誘惑に負けずに健康的な生活を続ける価値(未)」といった未充足の価値には、ラーメンだのアイスクリームだのお酒だのの食品の写真がたくさん集まっていました。でも、ここにはたばこが入ってない。たばこは「健康によくないことをやめる価値(未)」というような価値になっていて、明らかに違うものでした。同じように“わかっちゃいるけどやめられない”といっても、だいぶ違うわけです。


また、出来事に「かっこいい自転車を買ったら健康的になれるかと思って買ったが、もったいなくて乗ってない」というようなものがあって、その価値は「趣味と結びつけたきっかけで健康増進になる価値(未)」のような価値が付けられています。他に、ランニングユーズを買ったけど出来てないというのもありました。この価値は重要な価値のような気がします。なんでも形から入る人っていますよね。形から入るのは、実は自分のモチベーションを上げる為なんでしょうが、それが維持しないことが多いのでしょうね。ここは何かアイディアの源になるような気がします。


重要な発見だったのは、健康を気遣うという行為は、家族やペットなどパートナーの存在に重要な価値があるというものです。家族のためにとか家族やペットと一緒にとか。なるほどですね。確かにあります。こういう価値があることを早い段階から発見しておくと、より柔軟なアイディア発想につながると思います。

全体として、仕事で忙しいビジネスパーソンがサンプルになっていることを反映し、「健康を気遣う」というテーマなのに、食や運動といった直接的な健康維持は当然なのですが、ストレスを発散するとか体を休める、リフレッシュするという、どちらかというと精神的な健康に関する行為もたくさん出ていたことが特徴だったと思います。忙しいビジネスパーソンにとって、健康維持の前にリフレッシュの方が課題なのだなと思いました。

今回の機会をご提供いただき、ブログでの公開もご快諾いただきました富士フイルムデザインセンターの皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。